「ザクロはさまざまな疾病に対して、驚くべき効果があります。では、いったいどんな効用があるのか といいますと、たとえば植物でありながら人間の生命の根源に作用する性ホルモンを含んでいたり、 水虫菌を殺してしまうほどの殺菌力があったり、肩こりを解消したりと、その効果は多岐にわたって います。‥‥ザクロは健康維持のためにも、老化防止のためにも、また、一般家庭薬のように病気や けがの症状を和らげるものとしても、大いに利用できるものなのです。」 「実際ザクロは、特にこれといった病気でなくとも、栄養補強・体力増強などの毎日の健康づくりに、 日頃から大 いに利用したい果実です。また、現代は、複雑な人間関係や生活環境など、ストレスがた まる社会です。‥‥ザクロの有効成分を活用し、ストレス疾患から身体を守り、健康で幸福な人生を 送りたいものです。そこで、その第一歩として、まずはザクロの効用を紹介しましょう。そのほかに、消火器系統のガンや、子宮頸ガンにも有効です。‥‥ これらの効能は、古代ギリシャ、エジプト、ローマや中国における医薬学、あるいはザクロ の原産地であるイランに見られるザクロ利用法、さらに日本における民間薬的な使い方など、 多角的な資料から得たものを列挙したものです。」
●健康保健的に 使われる効能‥‥食欲増進 体力回復 強壮 強肝 喉の渇き防止 二日酔い予防など
●歯科領域 ‥‥歯床出血の止血 歯痛 歯肉炎 歯槽膿漏 虫歯 ●眼科領域 ‥‥眼のかすみ ものもらい●耳鼻科領域
‥‥鼻血止血 中耳炎 喉の痛み 咽頭炎 喉頭炎 扁桃腺炎●皮膚科領域
‥‥やけど 水虫 たむし かかとのひび割れ 皮膚かゆみ止め その他の皮膚病 陰部・肛門の湿疹●整形外科領域
‥‥肩こり 打撲 骨折 筋肉の痛み 足腰の筋肉麻痺 四肢無力●外科的領域
‥‥肩こり 打撲 骨折 筋肉の痛み 足腰の筋肉麻痺 四肢無力 ●内科的領域 ‥‥吐き気止め 偏頭痛 貧血 健胃 整腸作用 下痢止め 寄生虫駆除 各種感染症 抗菌・抗ウィルス作用 ●泌尿科領域 ‥‥利尿作用 糖尿病 早漏防止 ●婦人科領域 ‥‥女性性器出血 帯下 月経不順
古代から日常生活のさまざまなシーンで利用されてきたザクロ。この知恵を現在もなお受け継ぎ、 生活にうまく取り入れて活用している国が、原産国イランです。 「イランでは、この甘い果実が採れる時期には、たとえば消化を助ける目的で、食後のデザートとして 日常的に食べられたり、また葉を煎じて紅茶のようにして飲まれます。さらに、ザクロから絞った果 汁を濃縮エキスとして保存し、季節を問わず、年中、習慣的に愛用しています。 イランの人たちは、
喉の渇きを抑える |
胃を丈夫にし、滋養強壮効果がある |
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肝臓や胆嚢のはたらきを強める |
血液を浄化する |
発熱中の悪寒、震えを抑える |
糖尿病、高血圧、高脂血症を予防する |
妊娠中の異常嗜好を抑える |
肌の色を白く明るくする |
といった効果をあらわすザクロエキスを、健康飲料や美容のための飲料として大いに利用しています。 さらには、 ●エキスをワインと混ぜて湿布薬とし、身体の腫れやむくみをとる ●羽手指の傷の止血や、爪の生え際の傷に直接塗布する ●薄めたエキスでうがいして、歯茎を引き締めたり、歯茎の出血を止めたりする など、外用薬としても使っています。」
「イランでは、ザクロは汚れた血液を浄化してくれる果実であると考えられています。 ザクロの効能の原点をそのように捉えれば、ザクロの幅広い作用も納得がいきます。」
●ギリ
シャ医学を原点としたペルシャ医学理論
「イランにおける、いわゆるペルシャ医学は、アラビア医学と同様に、紀元前5世紀ごろのエンペドクレス
(前490〜前430頃)とヒポクラテス(前460~前375頃)によるギリシャ医学に端を発し‥‥生命の
4元素である黒胆汁、黄胆汁、血液、粘液がバランスを保つことによって健康が維持されるとされて います。すなわち、病気は血液が古くなり、汚れたことによって起こるという考えです。そのため、 足のふくらはぎにわざと傷をつけて古い血を流して捨てるという習慣が残っており、イスラム教の祭 日にも風習としてその儀式が行なわれるそうです。 この考えは古い血を流して災いを捨て、新鮮な血液を体内で製造させるという、自然治癒力を高め ることをにらんだ知恵なのかもしれません。ちなみに、このような概念が強く残っているイランでは、 献血に対する姿勢は類を見ないほど積極的です。」 ●中国医学の「おけつ」 「一方、中国の医学でも、古い、汚れた血が災いとなって病いが生じるという『おけつ』の概念があり ます。この概念の基本になっているのは、人体の生理活動の基本物質は、気、血、津液という考えで す。気とは、体内の各系統器官の生理的機能を指しており、血とは基本的には血液であり、血液の持 つ滋養作用です。津液とは体内のすべての正常な水分と体液のことです。気と血が停滞して十分に流 通しないときには痛みが起こり、調和したときには痛みは起こりません。それまで合った痛みも消失 するという解釈です。」
ザクロ果実の成分(可食部100gあたり) |
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単位 |
ザクロ |
エネルギー カロリー |
67 |
水分 |
81.1 |
蛋白質 |
0.6 |
脂質 |
0.2 |
炭水化物 糖質 |
16.8 |
繊維 |
0.8 |
灰分 |
0.5 |
無機質 カルシウム mg |
8 |
リン mg |
15 |
鉄 mg |
0.1 |
ナトリウム mg |
1 |
カリウム mg |
250 |
B1 mg |
0.03 |
B2 mg |
0.03 |
ナイアシン mg |
0.3 |
C mg |
10 |
単糖類 |
‥‥ブドウ糖(グルコース) |
二糖類 |
‥‥ショ糖 (シュークロース ブドウ糖+果糖) |
多糖類 |
‥‥デンプン |
●ここでちょっと、糖質について復習。 「糖(炭水化物)は、体内に入ると分解・吸収されて、肝臓にグリコーゲンとして貯蔵されます。 そして、運動してエネルギーを消耗したり、空腹感を覚えたりしたときに、ブドウ糖として肝臓から 血液中に放出され利用されるようになっています。」 ●糖尿病と糖分の関係 「砂糖の場合、インスリン(膵臓から分泌される糖代謝ホルモン)の助けを借りて、数段階の複雑な過 程を経た上で、やっとエネルギーとして利用できる形になります。そしてこのとき、インスリンが不足 すると、糖の代謝がうまくゆかなくなり、その結果、血中のブドウ糖量が過剰となって、尿中に排泄さ てしまいます。身体としてはエネルギーが不足した状態であるのに、一方インスリンを無理に分泌し ようとするわけですから、膵臓に過度の負担がかかります。以上は糖尿病についての概略です。 果糖の場合は、インスリンの助けをほとんど要さず、体内にあるフルクトキナーゼという酵素により 分解されると、すぐにエネルギーとして利用できます。果糖は膵臓に負担をかけないのため糖尿病予防 や食餌療法に優れた糖分ということができます。」 ●まだある果糖の偉大なメリット 「体内に取り入れられた糖などの栄養素は、主に小腸などの消化器官から吸収され、ホルモンや酵素 に よって分解された後、 さまざまな臓器へ送られます。この流れは 、肝臓で生成されエネルギーの根源と なる特殊物質によって支えられています。これの働きとしてはグリコーゲンを生成し、肝臓に栄養を与 え、アルコール分解酵素の分泌を促進するなどが挙げられます。そして、果糖はこの物質を多く作り出 す効果があるとされています。」 ●ザクロ果汁に含まれる糖分 「ザクロ果汁100ミリリットル で、総糖質として16.1 中、ブドウ糖が7.2 果糖7.9 となっています。 エネルギー源として最も重要とされるブドウ糖、優れた糖分である果糖を多く含んだ果実といえます。」
「植物であるザクロのタンパク質含有量は、当然ごくわずかです。タンパク質とは、たくさんのアミノ 酸が連なったものです。‥‥アミノ酸の中には、必須アミノ酸と呼ばれるものがあります。これは身 体の細胞を構成する成分であり、生理機能を維持するために欠かすことができないものです。しかも、 体内では作られないため、常に外から取り入れなければなりません。ザクロに含まれているアミノ酸 は、そのほとんどが、必須アミノ酸であるグルタミン酸とアスパラギン酸です。」 「グルタミン酸とアスパラギン酸は、いずれも脳の中で神経細胞から次の神経細胞へと興奮を伝える物 質で、専門的には興奮性神経伝達物質と呼ばれるものです。この物質がないと、脳の情報伝達は全く 行なわれなくなり、脳機能がストップしてしまいます。 古代からザクロが二日酔い防止、鎮痛作用、鎮静作用など、もろもろの精神機能維持の目的に利用 されていたことを考えると、非常におもしろいことです。」
無機質に関してザクロは、他の果実と比較すると、カリウムを多く含んでいます。 「カリウムは、組織細胞内に多く含まれている無機イオンで、生命を維持するために欠かすことのでき ないものです。特に神経細胞や筋肉の興奮性の調節にとっては重要なイオンとされています。 ところが、重要であるにもかかわらず、体内カリウム量は非常に変動しやすいのです。食事をとら なかったり、下痢や嘔吐が起こったりすると体内のカリウムは減少します。カリウムが減少すると、 筋肉に力が入らない筋無力状態や意識障害が起こります。さらに、心臓機能にまで影響が出るほど重 大なことにもなります。 古代よりザクロが下痢止めに使われてきたのは、単に胃腸の運動を抑制するだけでなく、病後の カリウム補給にも役立っていたのでしょう。」
ザクロに含まれる主なビタミン類はB1・B2 ・ナイアシン・Cで、いずれも水溶性です。 それぞれのはたらきと、欠乏した場合の症状は次の通りです。 ●ビタミンB1 「サイアミン、抗神経炎性ビタミンともいわれ、エネルギーを得るための糖代謝経路の補酵素です。 これは糖質代謝になくてはならない栄養素で、糖質を多量に摂取するほど必要とされます。また、 神経への直接作用もあります。欠乏すると、食欲不振、疲労、体重減少を起こします。欠乏症で もっとも有名なのは脚気です。」 ●ビタミンB2 「リボフラビン、ラクトフラビン、あるいは成長促進因子といわれます。黄色の色素を含み、酵素系の 補酵素としてはたらきます。欠乏すると、粘膜や皮膚などに特有の症状が起こります。食欲不振、 吐き気、口唇症、口内炎、舌炎、鼻尖炎、咽喉の炎症や浮腫、眼の充血、角膜炎、皮膚の乾燥や 脂漏性皮膚炎、貧血などです。乳幼児では、けいれんなどの神経障害を起こします。一般に、日本人 はビタミンB2 がもっとも不足しがちです。」 ●ナイアシン 「ニコチン酸とも呼ばれ、生体内の酸化還元反応で補酵素のはたらきをします。 欠乏症として有名なのはペラグラです。そのため抗ペラグラ因子とも呼ばれます。発赤、水疱などの 皮膚炎、皮膚の角化、色素沈着、舌の発赤や痛み、慢性下痢に加え、中枢神経症状として頭痛、不眠、 めまい、記憶障害などが起こり、錯乱を起こしたり発狂することもあります。」 ●ビタミンC 「アスコルビン酸ともいい、体内ではアミノ酸代謝に必要とされます。また、生体内の酸化還元反応に もはたらきます。ヒト、サル、モルモットでは生体内で合成する能力を持ちませんが、ほかの多くの 動物は合成能力を持っています。欠乏して起こる病気に、毛細血管が弱まって出血しやすくなる壊 血病があります。この病気は英国海軍の人たちに多くみられたものです。長い航海によって新鮮な 野菜や果物を摂取する機会が少なかったせいです。‥‥ほかには歯槽膿漏、貧血、食欲不振、 色素沈着などに、総合ビタミン剤として用いられます。また、最近では、ビタミンCが抗貧血作用 や抗ガン作用を持っていることで注目されています。」
●アルカロイド 「アルカロイドとは、窒素を含有している植物成分の総称です。ザクロには主として、ペレチエリンと イソペレチエリンが含まれており、‥‥タンニンと結合したタンニン酸ペレチエリンの形で含有され ています。‥‥駆虫作用が強く、組織や血管を収縮させる力、すなわち収斂作用も持っています。」 ●タンニン類 @エラグ酸 「タンニンが加水分解されてできたものであり、酸でありながらフェノールでもあります。ザクロ に含まれるタンニンが加水分解されると、60%内外のエラグ酸を生じるといいます。クルミやカ シューナッツ、ユーカリにも多く含まれています。鎮静作用や抗けいれん作用、運動機能抑制、睡 眠薬による睡眠の延長などが観察されています。古代ギリシャやインドにおいて、ザクロが鎮静剤 や二日酔い防止などに使われていたのも、このエラグ酸の効果かもしれません。 また、ベンゾピレン代謝物や、芳香族炭化水素化合物による発ガン作用を強力に抑えます。このた め、ガン予防のプロトタイプとして注目を浴びています。」 Aルテオ酸 「エラグ酸がさらに加水分解されたものです。ザクロ中では、このルテオ酸はブドウ糖と結合して、 エステルといわれる状態になっています。」 B没子食酸 「タンニンが加水分解されてできたものです。タンニンは、ルテオ酸以外にも、この没子食酸とも結 合しています。‥‥ ネコの収斂性止血薬として用いられますが、以前は腸の収斂薬として、ヒトでも使われていました。」 ●酸およびその他の成分 @酒石酸 「広く植物界に存在していますが、特にブドウの果実や葉に多く含まれているためにブドウ酸と呼ば れることもあります。酸味に加え多少の渋味がありますが、水、アルコールに溶けやすく飲料や菓 子などに用いられます。最近では、血糖降下作用を持っていることが推測されています。」 Aクエン酸 「ザクロの酸味を作っているもので、レモン、ミカン、ウメなどのほとんどの果実の酸味をなしてい ます。クエン酸は水に溶けやすく、さわやかな風味から清涼飲料水の酸味剤として使われます。 また、クエン酸ナトリウムは血液凝固防止剤としても使われます。」 Bリンゴ酸 「クエン酸と同様に、果実の酸味をなしていますので、とても甘酸っぱい香りがします。」
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成分名 |
作用 |
欠乏症と効用 |
糖類 |
グルコース |
最も重要なエネルギー源 |
エネルギー補給 |
アミノ酸 |
グルタミン酸 |
体組織細胞の構成要素 |
精神機能障害 |
ミネラル |
カリウム |
神経細胞や筋肉の興奮性 |
筋無力状態 |
ビタミン類 |
ビタミンB1 |
抗神経炎因子 |
脚気・食欲不振・疲労・体重減少 |
タンニン類 |
タンニン |
収斂作用・止血作用 |
急性・慢性下痢、止血、口内炎、 |
ペレチエリン類 |
ペレチエリン |
駆虫作用、収斂作用 |
条虫駆除 |
酸 |
酒石酸 |
血糖降下作用 |
糖尿病 |